親御さんの入院が決まった。あるいは、急に運ばれたという連絡が入った──。
こういうとき、頭が真っ白になるものです。目の前の看病のことで精一杯なのに、家に帰れば郵便物が溜まり、支払いの期限が来て、契約のことまで手が回らない。
この記事は、入院の前後で家族が確認しておきたい契約と手続きを、時系列で並べたものです。全部を一度にやる必要はありません。急ぐものと、落ち着いてからでよいものを分けることが、この記事のいちばんの目的です。
なお、医療や法律にかかわる判断は、この記事では踏み込みません。相談先をお示しするところまでとします。ご事情はご家庭ごとに違いますから、そこは専門の方にお任せするのが確かです。
まず:急ぐもの/落ち着いてからでよいもの
慌ただしいときこそ、順番が助けになります。
入院直後に急ぐこと
- 病院への連絡先の届け出
- 当面の入院費の支払い方法の確認
- 家の戸締まり・火の元・冷蔵庫
数日以内にやること
- 郵便物と支払い期限の確認
- 通信・公共料金の状況把握
落ち着いてからでよいこと
- 契約の名義変更や解約の検討
- 保険の請求
急がなくてよいことを急がない。これだけで、ずいぶん楽になります。
① 入院直後──まず家のこと
親御さんが不在になった家は、そのままにしておくと傷みます。
- ☐ 戸締まりと施錠……不在が長引くと空き巣の対象になり得ます
- ☐ 火の元・ガスの元栓を確認
- ☐ 冷蔵庫の生鮮品を処分する
- ☐ 郵便物が溜まらないようにする(郵便局の転送届という手もあります)
- ☐ 新聞・宅配など、止めるべき定期便がないか
留守宅が長期になるなら、防犯面の備えも考えどころです。実家の防犯グッズおすすめガイドと屋外防犯カメラと留守宅の防犯グッズ7選が参考になります。
郵便物が溜まっているのは、留守だと外から分かる合図でもあります。防犯の意味でも、早めに手を打っておくと安心です。
② 支払いが止まらないようにする
入院中でも、毎月の支払いは容赦なく続きます。ここが滞ると、電気が止まる、携帯が止まるといった二次被害につながります。
- ☐ 支払い方法(口座引落・カード・振込用紙)を確認する
- ☐ 引落口座の残高が足りているか
- ☐ 振込用紙で払っていた分が、支払い漏れになっていないか
- ☐ クレジットカードの有効期限が切れていないか
とくに注意したいのが、振込用紙で払っていた契約です。口座引落なら本人が動けなくても続きますが、コンビニ払いなどは誰かが払いに行かないと止まります。郵便物を確認するときは、この観点で見てください。
固定費の全体像を把握するには固定費見直しの正しい順番の考え方が使えます。何にいくら払っているかが見えると、優先順位がつけやすくなります。
③ 通信契約──使わない期間の扱いを決める
入院が長引くと、使っていないスマホ代を払い続けることになります。
- ☐ 契約の名義を確認する(親名義か、家族名義か)
- ☐ 利用実態に対して料金が高すぎないか
- ☐ 一時休止(休止制度)があるか、キャリアに確認する
- ☐ 家族が代理で手続きできるか確認する
ここで壁になるのが、名義の問題です。親名義の契約は、原則として本人でないと手続きできません。委任状や本人確認書類が必要になります。この点は親名義の通信契約を子どもが整理する手順に、必要書類まで詳しくまとめてあります。
入院をきっかけに介護が始まる場合は、親のスマホ・通信費を子どもが見直す方法が、そのまま参考になります。
なお、入院中の見直しを急ぐ必要はありません。退院の見通しが立ってから決めても遅くはありません。慌てて解約して、退院後に困るほうが厄介です。
④ 使っていない契約を洗い出す
入院を機に郵便物や明細を見ると、思わぬ契約が見つかることがあります。
- ☐ 使っていないサブスク・月額サービス
- ☐ 昔加入したまま忘れているオプション
- ☐ 使っていない固定電話やインターネット回線
洗い出しの手順は親名義の携帯・サブスクを整理する手順にまとめています。
ただし急いで解約しないこと。本人が大事にしているサービスかもしれません。退院後に本人と相談してから決めるのが穏当です。
⑤ 保険の確認──「入っているか」を知るだけでよい
入院にともなう給付金が出る保険に入っている場合があります。
- ☐ 加入している保険の証券・保険会社が分かるか
- ☐ 入院給付金の対象になりそうか
- ☐ 請求に必要な書類(診断書など)を確認する
保険は請求しないと支払われません。入っているのに気づかず、そのままになっている例があります。まずは「何に入っているか」を把握するだけで十分です。
内容の判断や請求の可否は保険会社に直接お尋ねください。この記事で個別の判断はいたしません。
⑥ 家族が代理で動けるようにしておく
本人が手続きできない状態が続く場合、家族が代理で動く必要が出てきます。
- ☐ 委任状が書ける状態か(本人の意思確認ができるか)
- ☐ 本人確認書類のありかを把握しているか
- ☐ 通帳・印鑑・キャッシュカードの保管場所を知っているか
本人の判断能力がしっかりしているうちなら、委任状で多くのことができます。必要書類の具体は親名義の通信契約を子どもが整理する手順に整理してあります。
判断能力の低下が進んでいる場合は、成年後見制度という仕組みがあります。ただしこれは家庭裁判所が関わる手続きで、専門的な判断を要します。まずは地域包括支援センターか、市区町村の相談窓口へ。無料で相談に乗ってもらえます。
⑦ 退院が見えてきたら
- ☐ 自宅に戻れる状態か、住まいの整備が要るか
- ☐ 介護保険の申請が必要か(地域包括支援センターへ相談)
- ☐ 止めていた定期便・郵便転送を戻す
- ☐ 見直しを保留していた契約を、本人と相談して決める
退院後に一人暮らしが続くようであれば、暮らし全体を見直す機会でもあります。離れて暮らす親の暮らしを守るチェックリストに6分野をまとめてありますので、落ち着かれたころにご覧ください。
困ったときの相談先
- 地域包括支援センター……高齢者の暮らし全般の相談窓口。介護保険の入口でもあります。市区町村で場所を教えてもらえます
- 病院の医療ソーシャルワーカー……入院中の生活や費用の相談に乗ってくれます。病院に相談室があるか聞いてみてください
- 市区町村の高齢者福祉担当
- 契約先のカスタマーセンター……名義や休止の可否は、直接聞くのが確実です
一人で抱えないことが何より大事です。とくに医療ソーシャルワーカーの存在は知られていませんが、入院中の困りごとを相談できる心強い相手です。
よくあるご質問
何から手をつければよいですか
家の戸締まりと、支払いが止まらないようにすることです。この二つは急ぎます。契約の見直しや解約は、退院の見通しが立ってからで構いません。
親名義の契約を、子どもが解約できますか
原則として本人の手続きが必要ですが、委任状と本人確認書類で代理手続きができる場合が多いです。必要な書類は契約先によって異なるため、まずカスタマーセンターに確認してください。詳しい手順は親名義の通信契約を子どもが整理する手順にあります。
入院中にスマホを解約してよいですか
急がないほうがよいと思います。退院後に困りますし、番号が失われると連絡先としても不便です。
まずはプランの見直しや一時休止が使えないか、キャリアに確認してみてください。解約は最後の手段と考えるくらいでちょうどよいでしょう。
入院費が高額になりそうで不安です
公的な負担軽減の仕組みがあります。まずは病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)か、加入している健康保険の窓口にご相談ください。
制度の適用は個々の状況によりますので、この記事では判断いたしません。専門の窓口で確認されるのが確実です。
判断能力が落ちてきている場合はどうすればよいですか
まず地域包括支援センターにご相談ください。介護保険の申請、成年後見制度、日常生活自立支援事業など、状況に応じた選択肢を案内してもらえます。無料で相談できます。
法律にかかわる判断は、専門家の関与が必要です。ここでは相談先までのご案内にとどめます。
まとめ
- 急ぐのは家の戸締まりと支払いが止まらないようにすること
- 契約の見直しは、退院の見通しが立ってからで遅くない
- 親名義の契約は、委任状と本人確認書類で代理手続きできる場合が多い
- 保険は請求しないと支払われない。まず「何に入っているか」を知る
- 判断に迷ったら地域包括支援センターと病院の相談室へ
入院という出来事は、家族にとって突然の重荷です。けれども、やることに順番をつければ、必ず一つずつ片づきます。
まずは今日、家の戸締まりと支払いのことだけ。それで十分です。

